原薬工業会とは沿革

30周年を迎えて
日本医薬品原薬工業会30年の歩み

2005.10.1

日本医薬品原薬工業会(以後、「原薬工業会」という)が発足してから、今年で30年目を迎える。原薬工業会は、1975年(昭和50年8月29日)、設立発起会社7社により22社の会員会社でスタートした。設立趣旨は薬効再評価、GMP法制化に関する問題など、会員会社共通課題の検討に加え、第一次オイルショック後の急激な為替レートの変動により円高ドル安に見舞われ、当時、経営基盤に支障を来たした企業も多く、会員会社の経営危機救済の目的も含めて設立された。

設立直後の緊急課題として原薬工業会が行ったことは、雇用調整給付金支給対象業種の指定を受けることであった。

当時、労働省より景気変動業種に認定され、生産調整(従業員の一時帰休及び教育訓練等)を実施した企業には、雇用調整給付金が支給される措置が採られていたため、事務局が中心となり、厚生省経済課、労働省職業安定局等へ足繁く通い、雇用調整給付金支給対象業種指定を受けるべく、業種実態調査を実施すると共に、調査結果の集計資料の作成、申請書の作成、提出、ヒヤリング等を経た結果、雇用調整給付金支給対象業種の指定を受けることが可能となった。

原薬工業会発足から10年を経た1985年の時点で、会員会社は40社であったが、それからの7年の間に加盟会社は増え続け、会員数は倍増の80社に達した。今から13年前、1992年のことである。

因みに現在の会員数は、108社となっている。

会員会社の増加の背景には、当時進められていた薬事行政の動向が深く関わっていたと考えられる。即ち、行政当局が医薬品の品質、有効性及び安全性を確保するために必要とされる、製造段階における品質の確保のための要件としてまとめたGMP(Good Manufacturing Practice)に基づく規制を医薬品企業に導入する方針を打ち出し、医薬品GMP指導基準を1974年公示、1976年施行され、その後、製剤GMPは、厚生省省令として1979年公示、1980年から施行されることとなり、薬業界にとっては新しい潮流が押し寄せていた。

そのような状況の中で、原薬工業会は、近い将来、原薬にもGMPが施行されることを予測し、製剤と異なった原薬特有の製造管理と品質管理の考え方を織り込んだ原薬工業会独自のGMPを作成する必要があると考え、1982年、7名のメンバーによりGMP委員会を発足させた。1983年、当局にGMPに関する要望書を提出。1984年、GMP委員会は名称をGMP技術委員会に改称すると共に、GMP技術委員会は、原薬GMP原案作成のため、委員4名を選任し、検討に入った。

同年11月、原案の完成を待って、会員各社に送付し、各社からの意見聴取を行った。原薬工業会は、GMP技術委員会を主体として策定した、原薬GMP自主基準案を1987年(昭和62年)厚生省に提出した。

その後、自主基準案に対し厚生省より、日薬連と協議し、双方合意の上で作成した原薬GMP基準案を再提出するよう求められた。

以後、原薬GMP基準案をたたき台として日薬連との度重なる合同会議を行い、最終案を提出したが、更に最終案について、厚生省、日薬連、原薬工による合同会議が重ねられ、原薬GMP自主基準案として提出されたものは、当初の自主基準による原薬GMPの実施という原薬工の思惑とは異なり、1988年7月15日局長通知として原薬GMP基準が公示され、1990年1月1日施行されることになった。

1985年以降1992年の7年間に原薬工会員企業が倍増した背景には、以上のような動向を注視していた各企業が、その動きに敏感に対応した結果ではないかと考える。

1990年、原薬GMP基準が公示されることになり、GMP技術委員会はその役割を終え、名称をGMP委員会に改称し、委員と共に引き継がれた。

1991年、GMP委員会に加え、新たに総務委員会、法規委員会、経済委員会を発足させ、原薬工業会は、4委員会による新たな活動が始まった。

新たに創設された3委員会のそれぞれの役割として、総務委員会は、当時懸案であった当工業会の法人化の推進を目的にしたものであり、法規委員会は、原薬製造に係る関連法規(消防、労働安全衛生、環境規制等)の調査研究、原薬の薬事法上の位置付け、並びに承認・許可関係についての問題点の調査究明を課題とし、経済委員会は、会員各社の経営に関わる問題として原薬業界の業況調査を行なうと共に各社の労働時間実態調査、原薬に係る輸出入の問題点、特に関税・輸出入手続き等について問題点の調査究明を行なうことであった。

一方、原薬GMP基準が施行された2年後の1992年、厚生省はGMP改正に向けて動き出し、業界代表を交えたGMP改正ワーキンググループを発足させた。原薬工業会にも当局からワーキンググループ参加委員を推薦するよう要請があり、原薬工推薦の委員も日薬連推薦委員と共に選任され、日薬連、原薬工によりGMP改正ワーキンググループが組織された。GMP改正の要旨は、既に省令化されていた医薬品GMPの改正と共に局長通知として施行されて間もない原薬GMPを改正し、WHO・GMP基準に則り、製剤、原薬併せた「日本の医薬品GMP」として、国際的ハーモナイゼーションを図るということであった。

その背景には、WHO・GMP基準改訂の動きと共に、ドイツ、スウェーデン、スイス等との医薬品GMP二国間協定締結に続き、日米二国間協定締結に向けて原薬GMP日米合同査察のための協議も行われ、同時にEFTA(European Free Trade Association)加盟国を中心とする約15カ国で構成されているPIC(Pharmaceutical Inspection Convention)への加盟についても検討中という状況にあり、GMPに関する国際的な動きが当時に進行していたということが影響を及ぼしていたといえる。

厚生省担当官を交えたGMP改正ワーキンググループは、2年強に亘り検討を続け、1994年4月省令として医薬品GMPが施行され、1990年1月に施行された「原薬GMP」は4年3ヶ月をもってその役目を終え、「医薬品GMP」にバトンタッチされた。この結果、改正「医薬品GMP」は、原薬も含めた医薬品製造所の許可及び更新並びに品目許可の要件となり、医薬品GMPは、許可基準という側面を備えて制定されたのである。

原薬工GMP委員会は、同年、引き続き行われたバリデーション基準作成に加わり、1995年からは日薬連のGMP解説及び事例集作成にも参加し、4年間に亘り検討を重ね、その成果物としての1999年版GMP解説及び事例集が出版された。

原薬工は、日薬連への参加と平行して1998年から製薬協からの呼掛けに応じ、日米EU三極によるICHQ7a(原薬GMPガイドライン)の検討を始めると共に、国際会議に専門委員を派遣、パリ会議を始めとして開催されたICH国際会議には全て参加した。

同時にEWG(エキスパートワーキンググループ)サポートグループにも委員を送りこみ、3年間に亘り製薬協と共に活動を行い、2001年11月2日 医薬発第1200号「原薬GMPガイドライン」発出に至るまで、当局に対し製薬協と共に協力を行ってきた。

2001年から2002年にかけて、原薬工として日薬連のGMP事例集各条見直し検討会に参加し、GMP事例集2003年版作成に協力すると共に4年間に亘り厚生科学研究班に参加し、ICHQ7aに係る研究及び原薬の構造設備指針並びに不純物プロファイルに関する研究及び資料作成に携わってきた。

2001年より薬事制度改正に関わる当局との話し合いが続けられていたが、2002年初頭には、厚生労働省より「薬事制度見直し(案)の概要について」等、参考資料が提示され、具体的に薬事制度の見直しに関する動きが活発になり、日薬連は、同年6月薬事法改正プロジェクトを立ち上げた。

日薬連GMP委員会は、薬事法改正プロジェクト第3ワーキングG及び三つの実務担当グループでGMP、GQP、構造設備それぞれに関わる検討を始めたが、原薬工からも委員を派遣、2002年から2003年まで改正薬事法に基づくGQP、GMP、構造設備規則の原案作成のための協力を行なった。

2004年、製薬協と共同で、GQPに基づく製造販売業者と製造業者との取り決めに関する契約書見本作成のための作業を行い、取り決め見本を作成し、業界内に配布。

2005年度、政省令の施行により、GMP改正に伴うGMP事例集改訂作業を日薬連GMP委員会が着手、日薬連からの呼びかけに応じ、原薬工からも参加、改訂作業に加わり、完成したGMP事例集(案)は、当局の監修を待って年内の発刊が予定されている。

 概略であるが、以上のような経緯を経て30年が経過し、現在に至っている。


30周年を迎えて
GMP委員会10年の歩み

2005.10.1

GMP委員会は、原薬工で最初に発足した委員会であって、1982年に設置されて以来、GMP技術委員会という名称に変更していた一時期もあったが、23年間に亘り、積極的に委員会活動を続けてきた。会員各社から推薦して戴いた数多くの歴代委員の方々と共に、GMPに関わる諸問題について調査研究を行い、それらの問題の対応について検討すると共に、問題解決のための提案を行ってきた。30周年記念を迎え、委員会としての10年を振り返り、反省と共に今後の進むべき道を考えるため、1995年度(平成7年度)から2004年度(平成16年度)の委員会活動の概要を纏めて見た。

GMP委員会は、各会員会社からご推薦戴いた委員の方々で構成されている。

各委員の会社における所属部署は、品質保証部門、品質管理部門が多いものの、製造、研究、営業等と、多岐に亘っており、それぞれの立場から忌憚のない意見を出して戴き、十分な議論を尽くして諸問題を検討してきた。

従って、委員会として出す結論は、様々な視点から出された意見を勘案して出されたものである。

GMP委員会の目的は、会員各企業がGMPを遵守すると共に、GMPを効率的且つ合理的に実施していくための方策を考え、それらを実施していくための手法を確立することに重点を置き、併せてGMP実施に伴う品質保証体制の在り方について究明をすることである。これらの目的を果たすために、実施している活動の概要を述べる。

1.GMP委員会の開催
2.GMP実務担当者研修会の実施
3.日薬連、製薬協等業界団体との交流、協議への参加
4.原薬GMPに関する行政当局への意見・要望及び施策の提案

1.GMP委員会の開催

GMP委員会は、当初不定期に必要に応じ開催してきたが、原薬GMP施行の1989年より、月1回の定例開催の他、当局からの意見聴取、パブリックコメントへの意見を求められる等、緊急を要する場合には、臨時の委員会を開催し、課題への対応を行ってきた。委員会のテーマは、政省令への適切な対応をするための検討、会員各社が抱えているGMPの課題を解決するための提案、当局の施策や業界の情報を基に、議論すると共にGMP委員会としての考え方を纏め上げ提案、提示していくことである。それらは、GMP委員会の意見として、必要に応じ当局に、業界団体に提案してきた。業界には原薬のGMPを専門的に検討する団体が他にないため、原薬工GMP委員会の意見、提案は、極めて責任が重いものと自覚し、常々の活動を行っている。

毎年GMP実務担当者研修会を開催し、会員会社の最も関心があると思われる課題について、テーマを選定し、委員会で十分に検討を行い、その成果を発表しているのもその一環と考えている。

2.GMP実務担当者研修会の実施

GMP実務担当者研修会は、毎年期末の3月に開催していたが、年度末は会員各社の業務が多忙であるという理由から、2002年以降は、4月に開催している。実務担当者研修会では、会員会社共通と思われる原薬GMPに関する課題を1年間かけて、GMP実務担当者の成すべき業務内容を考慮し、実務を行う際の問題点、課題等を念頭に置き、単に法令や規制をなぞるだけでなく、実務担当者自身の抱える問題を解決することを主眼に置き、内容を検討し、その成果を発表している。

研修会は、パネルディスカッション方式を採用し、質疑応答を活発に行うための時間を十分にとり、参加者と発表テーマについて意見交換をすることで参加者の好評を得ている。意見交換により、研修会参加者のそれぞれの意見、職場の現実的なGMP上の悩みを受け止め、検討すべき課題を拾い出し、翌年のテーマを選択する際の参考にしている。研修会のテーマとその内容は、会員会社に有用であり、研修会の参加者が、すぐに社内で利用できるものを選定するように心掛けている。各委員が1年間切磋琢磨し、纏め上げた資料を、研修会において評価して戴き、参考資料として活用したいという参加者のご意見が多いのは、委員会にとって嬉しいことである。

3.日薬連、製薬協等業界団体との交流及び協議への参加

業界団体との交流及び協議会への参加は、本来、原薬工業会総体としての活動であるが、GMP委員会としても積極的に委員を選出し、参加してきた。

1995年度以降も、GMP管理規則及び構造設備規則に関する解説及びQ&A作成に際し、厚生省、日薬連、原薬工合同検討会に委員を派遣するなど、多くの打合せ会議に参加し、原薬工としての意見を述べてきた。

1999年度(平成11年度)に長年にわたり日薬連と検討してきたGMP事例集、GMP解説書を厚生省監視指導課監修で発刊し、2001年度には厚労省、日薬連と共に改訂のためにGMP事例集の見直しを行った。一方、1998年ICHワシントン会議において、PIC / PICSの API GMP Guide案がICHの正式の議題として取り上げられることになり、日米欧の官民によるICH EWG国際会議が開催されることが決定した。ICH EWG国際会議に向け、製薬協から原薬工にQ7A専門家会議出席委員の派遣要請があり、GMP委員会委員を派遣すると共に委員をサポートするためのQ7Aサポーティンググループにも複数の委員が参加し、日薬連GMP委員と共に協力を行った。第1回のパリ会議を始めとして2000年まで9回に及ぶ国際会議に業界を代表して出席し、原薬GMPのガイドライン作成に携わってきた。2000年にはICH Q7Aとして日米EUが合意に達し、日本では2001年 (平成13年)医薬発1200号「原薬GMPのガイドライン」として発出され、原薬GMPのバイブル的存在であることは周知の通りである。ICH Q7Aと平行して1999年より厚生科学研究班において「医薬品製剤原料の品質確保に関する研究」を行うことになり、研究協力を要請され、委員を選出、3年間に亘り会議に参加し、研究報告作成に協力した。2002年度には日薬連の改正薬事法第1WG(生物由来関係)、3WG(GQP・許可区分・GMP)の検討会議に委員長をはじめ委員がオブザーバーとして出席、GQP、GMP作成に従事。2003年度には厚労省、日薬連との改正薬事法関連の検討会への参加。一方、製薬協と共同で「GQPによる製造販売業者と製造業者の取り決め事項について」業界案作成のための検討会議を持つと共に業界案作成に携わった事等は、年度ごとの特筆すべき活動であった。2003年度から製剤機械研究会と共に原薬設備の適格性評価について定期的に検討会を開催し、原薬設備の適格性評価の在り方に関して、引き続き共同研究を行っている。

4.原薬GMPに関する行政当局への意見・要望及び施策の提案

業界団体との活動と重複する部分もあるが、業界団体でまとめた意見の多くは、行政当局への提案となっている。GMP委員会としても、2003年度(平成15年度)には改正薬事法及びGMPのパブリックコメントに、2004年度(平成16年度)には承認申請書及び原薬登録簿原本のパブリックコメントに対し意見・要望を提示してきた。

GMP委員会は、この10年を振り返ると、委員相互が切磋琢磨し、積極的に意見交換を行うことで、前向きの結論を導き出す機運が更に高まってきた。

また、改正薬事法の検討に際しては、将来を見通した課題を設定し、確かな現状を認識することにより、課題を解決することが出来たように思われる。

改正薬事法により、製造承認制度が販売承認制度に変わり、製造販売業者の品質保証に関わるGQPと製造業者の行うGMPが密接に関わり、他方、製造販売業者が申請する承認申請書や、製造業者が作成するマスターファイルが、GMPにおける製品標準書と大きく関連することから、GMP委員会の活動も従来の守備範囲より更に拡大していることを認識し、そのことを念頭に置き、次の10年、さらに次の10年先にも、現在のGMP委員会の存在意義を堅持しつつ、更にその存在意義を高めて行くことが、GMP委員会の使命であると考えている。

GMP実務担当者研修会 
実施内容一覧(参考)

回数
実施年
管理番号
主題
第5回
平成7年
(1995年)
フルバリデーション、予測的バリデーション、同時的バリデーション、回顧的バリデーションについて委員会でまとめた結果を発表し、これをテーマとしてパネルディスカッション方式で実施

第6回
平成8年
(1996年)
バリデーション実施の際の重要工程の考え方、バリデーション実施例、バリデーション基準Q&A、製造支援システムのバリデーション
構造設備に関するQ&Aについて委員会でまとめた結果を発表し、これをテーマとしてパネルディスカッション方式で実施

第7回
平成9年
(1997年)
研究開発段階におけるバリデーションの実施範囲の検討と技術移転
原薬の製造管理とバリデーション
切替え洗浄のバリデーションと洗浄残留限度の考えかた

第8回
平成10年
(1998年)
原薬の製造管理及び品質管理における変更管理の考えかたと変更管理基準について
分析法のバリデーションについて
教育訓練と教育訓練の実効性の評価について

第9回
平成11年
(1999年)
99-001G
変更管理の手順と事例
99-002G
バリデーションプロトコールの実施例

第10回
平成12年
(2000年)
00-001G
製造支援システムについて
00-002G
文書管理
00-003G
医薬品製造におけるコンピュータバリデーション
ICH API GMP(Q7a)の進捗状況と問題点について

第11回
平成13年
(2001年)
01-001G
ICH原薬GMPの現状と今後について
01-002G
原薬・中間体の委受託製造における技術移管
01-003G
OOSの考え方とその対応に関する調査研究
01-004G
計測計器の管理運用とキャリブレーションの実際について

第12回
平成14年
(2002年)
02-001G
原薬メーカーにおける品質保証
02-002G
構造設備のDQ
02-003G
教育訓練と実効性の評価

第13回
平成15年
(2003年)
03-001G
バリデーションの再構築
03-002G
既存原薬の不純物プロファイル
03-003G
改正薬事法に伴うGMP適合性確認への対応について
03-004G
製品品質の照査

第14回
平成16年
(2004年)
04-001G
改正薬事法のもとでのGMP査察
04-002G
原薬製造を外部委託する際の留意点
04-003G
原薬及び中間体の再加工・再処理の考え方

第15回
平成17年
(2005年)
05-001G
洗浄バリデーションの見直し
05-002G
GMP教育訓練テキストの改定
05-003G
改正薬事法下における原薬のGMP
1
改正薬事法下のGMP管理
2
GMP組織の見直し
3
逸脱の管理
4
マスターファイル制度とその変更の管理


30周年を迎えて
法規委員会10年の歩み

2005.10.1

法規委員会は、1991年、原薬に係わる法的問題を検討することを目的として総務委員会、経済委員会と共に発足し、委員会活動を始めた。

委員会活動の趣旨は、原薬製造業の遵守すべき多様な法規制に着目し、調査研究を行い、併せて会員各社のコンプライアンスの向上を目指し、法規制に関する幅広い活動を行うことであった。

委員会発足以来、旧薬事法第2条の定義における、医薬品原薬の位置づけが曖昧であり、原薬の規制に不都合が生じていたため、この点の明確化をはじめとして、原薬に係わる法的諸問題の解明と規制緩和のための研究に精力を傾けてきた。

現在まで実施してきた主な項目
・原薬に係わる薬事法、通知並びに関連法規に関する調査、研究
・原薬取扱いに関する問題点の検討と対応
・規制緩和要望のとりまとめと当局への要望
・ワーキンググループによる研究活動、研修報告書の作成と配布
・原薬に係わる情報の伝達(GMP、化審法、労安法等の関連法規・基準)
・改正薬事法の検討と改善要望(DMF、流通における取扱い)
・諸法規と原薬製造業界の対応(PL、RC)
・総会、研修懇談会における会員への啓発、研修報告の配布
・他団体等との意見交流、ワーキンググループ等への参加

主な活動として、以下の5項目について概要を記載した。

1.薬事法改正に向けた調査研究

1)マスターファイル制度の調査研究

1994年、原薬の承認許可制度のあるべき姿を求めるため、欧州DMF制度を調査し制度内容について取りまとめ作成資料を会員各社へ配布した。

2001年、7月に実施した「原薬に係わる薬事法上の問題点に関するアンケート」にてマスターファイル(MF)制度等に関するアンケート調査を会員各社に協力を得て実施した結果、欧米と同様の制度となっても各社とも対応可能であることを確認できたため、MF制度に関する調査研究を開始した。

2001年、年度活動報告書では、1993年に作成したDMF作成に関する資料を更新すると共に米国のDMF制度に関する最新情報を掲載し配布した。

また、改正薬事法により原薬の流通における取扱いにおいては製造業許可が必要となったが、他団体と共に当局との話し合いにより、当分の間、従来どおりの卸売り一般販売業者による取扱いが可能となった。

2)他団体との意見交流

2002年、日薬連第6WG、厚生労働科学研究MF検討会に参加した。

2004年、9月に開催の国立医薬品食品衛生研究所主催の第2回医薬品品質フォーラム(テーマ:承認書と品質保証)へ参加、講師、原薬分科会の座長を派遣し、MFの取扱い(製造方法欄に記載すべき事項の範囲及び深さ、軽微な変更の内容)について、原薬製造企業の立場からの意見を述べると共に分科会において公開討論に参加した。

3)変更管理に関する調査研究

2003年、変更事例を収集すると共に、EU、FDAにおける変更管理ガイドライン、承認申請書記載事項に関する指針等を参考に「マスターファイルに係わる検討報告」として纏め上げ、作成資料を会員各社へ配布した。

2004年、MF制度の概要、事務手続き等が通知、事務連絡等で徐々に明らかになったため、「承認後変更に係わる検討(原薬)」として、前年度に行った変更事例検討資料を基に変更管理に的を絞った調査検討資料を作成した。

2.薬事法の課題検討

1994年、輸出用医薬品に関する制度的問題について調査検討を行い、作成資料を会員各社に配布した。

1997年、4月に薬事法の一部改正が施行され原薬関連事項として、治験関係、承認・許可申請関係及び市販後調査関連の3項目につき、改正内容を分かり易く取り纏めた資料を作成した。

1998年、前年に省令化されたPMSに対応するため、原薬製造業者における最小限の課題を整備し、製剤メーカーとの情報交換に関する覚書(案)と原薬の市販後調査に関する業務手順書(案)を作成し翌年の研修報告書に掲載した。

3.原薬製造に係わる諸法規の検討

1994年、製造物責任(PL)法・廃棄物処理(劇・毒物取扱い、悪臭防止、バーゼル条約)に関する調査資料を取りまとめ会員各社へ配布した。

1995年、ISO 9000とGMP、レスポンシブルケア(RC)、製造物責任(PL)法(取引契約と留意事項)の検討を実施した。

1997年、前年度に検討した原薬製造に係わる環境関連、化学物質関連、労働安全関連、その他の重要な法規について、38件の法律についてその目的、規制のポイント、許認可の概要、罰則等につき取りまとめ、その他法律名の紹介にとどめた22法令を加え、報告書として会員各社へ配布した。

4.規制緩和要望

1997年、薬事法関連で14項目、化審法関連で8項目の要望が寄せられ、委員会内で整理・検討を行い最終的に厚生省関係4件、通産省関係5件(化審法関係4件、アルコール専売法関係1件)につき規制緩和要望書を提出した。

1998年、市販後調査関係の義務軽減2件、原薬の再審査等にかかる手数料の軽減1件、化審法関連1件(国内承認の無い外国医薬品の中間体にかかる新規化学物質の取扱い)の要望書を提出した。

2000年度、政府の新規規制緩和3カ年計画に呼応し継続して規制緩和要望を検討し、会員からの要望2件を選択し、要望書を提出した。

同年、前年度から検討していた薬事法関連1件(小分け製造における試験検査の扱い)、化審法関連1件(医薬品製造目的のみの中間体に関わる承認前の届出免除)の要望書を提出した。

5.原薬取扱いの手引書の作成

2000年、原薬における許認可の手続き等が参考とすべき医薬品製造指針にも詳細が不明であり、原薬に係わる手続き、関連の特別な法令への対応を分かり易くすることを目的に、1998年より3カ年計画で検討を行ってきた冊子「原薬取扱いの手引き」を完成させ、会員各社に配布した。

30周年を迎えて
総務経済委員会10年の歩み

2005.10.1

総務経済委員会の生い立ちは、1991年発足した総務委員会、経済委員会がそれぞれの役割を持って独立して活動していたが、総務委員会がその役割を終えたため、1998年、両委員会は併合することとなり、総務経済委員会として再出発したものである。

1991年両委員会が発足以降、総務委員会は、当工業会の法人化推進のための活動を目的とし、経済委員会は、会員各社の経営に関わる問題として原薬業界の業況調査、原薬に係る輸出入等の問題点の調査究明を行うことで活動していた。

経済委員会は、雇用調整助成金の業種指定に係る業況等のアンケート調査等を行い、労働時間実態調査結果の集計と会員会社への情報提供、GMP省令化に伴う構造設備の増強、資金投資の低利融資等の調査、業況の深刻化雇用調整助成金の業種指定に係る業況等のアンケート調査を実施し、1993年厚生省経済課に提出、中小企業近代化促進法の研究等を行ってきた。

1995年平成8年業況(売上、輸出比率、円高影響、生産調整、GMP対応経費等)及びGMPに関するアンケート調査を実施し、その調査結果を纏め上げ、会員各社へ参考資料として提供してきた。

一方、総務委員会は、業界における存在感の向上とステータスを高めることを目的として法人化に向けて必要な資料の収集活動を行い、収集した資料に基づき、法人化の要件を満たすべき事項の検討を行ってきた。

しかし、当初目的とした、業界における存在感の向上とステータスを高めるという課題は、原薬工の活動状況への評価と時代の流れの中で達成しつつあり、理事会においても法人化不要とする意見が過半数を占める状況になっていた。

そのような状況を鑑み、1997年、法人化の是非について会員企業にアンケート調査を行った。アンケート調査の結果は理事会意見と同様の結果が得られたため、法人化は見送ることになった。

この結果、法人化を目的として発足した総務委員会は、その役割を終え、1998年より経済委員会の委員の減少傾向に加え強化補強の意味合いもあり合同委員会を開催することとなった。同年、両委員会は併合し、総務経済委員会として新たなスタートを切ることになった。

総務経済委員会は、新たな委員会活動として、以下の項目を規定したが、
1)総会、役員会開催に関する事項
2)各委員会活動の円滑化と活性化のために必要な事項
3)他の委員会に属さない課題に関する事項
4)原薬に関わる経済的な諸問題に関する事項
5)各種行事に関する事項

当時の課題として取り上げたことは、会員会社の増加に加え、時代の趨勢を鑑み、会員会社への情報提供が重要であると判断し、情報提供の手段として、インターネットによるHPの開設を早急に実施することであった。

1998年8月から、会員企業の協力を得て、HP開設のための資料収集を開始すると共にHP開設への準備が始まった。

1999年、原薬工として初めてのHPを開設した。2000年には、原薬の海外需要の掘り起こしが必要との意見が多いため、海外専用サイト、アウトソーシングドットコムを立ち上げたが、海外からの引き合いに偏りが多く、引き合いの質にも問題があることが判明し、海外サイトは閉鎖することとした。

2002年、従来からのHPの情報提供の不足を補うと共に内容を一新する必要があると判断し、新たなHPを作るべく検討を始め、HP検討WGを結成。

HP検討WG各委員により新HP作成具体案が提示され検討が重ねられ、2004年、新HPが完成。同年、総会にてその内容が披露された。HPは、その後も改良が重ねられ、現在に至っているが、HPの開設及び維持管理は、他委員会に属さない課題であり、各委員会活動報告をHPに掲載することにより、委員会活動の活性化に少なからず寄与しているのではないかと考えている。

原薬に関わる経済的な諸問題に関しての活動は、原薬工設立当初、緊急課題として取り上げた雇用調整給付金支給対象業種の指定、といった原薬メーカー共通の課題が見当たらないため、各種行事に関する事項の一環として行ってきたトップ研修会及び講演会において適時、議題、演題として取り上げてきた。

各種行事に関する事項への取り組みは、会員各社経営サイドの方々より御意見を頂戴する会合として、トップ研修会を1997年から2000年まで、毎年開催してきたが、より幅広く会員各社のご意見をお聞きするとともに、勉強会の開催及び懇親を更に深めることを目的として、トップ研修会を解消し、新たな試みとして、2001年より「研修・懇談会」を年に1回開催することにした。

研修・懇談会は2001年を皮切りに始められ、2002年は、原薬工GMP委員長、法規委員長により「改正薬事法に関連した諸問題について」と題して改正薬事法に関する各種解説が行われた。2003年、演題:「改正薬事法についての話題」講師:日薬連GMP常任委員会委員長 長江 晴男様にご講演戴いた。

2004年は、2005年4月の改正薬事法の施行を控え、省令、通知等の発出が遅れており、会員各社の改正薬事法対応に付いての関心が高かったため、二日間に亘り研修会を行った。初日は、「改正薬事法に伴い活性化するアウトソーシングの戦略」と題し、GPS代表 トニー・デイーガン 様にご講演を戴き、二日目は、法規委員会により、「ドラッグマスターファイルについて」及び「改正薬事法原薬メーカー関連事項について」それぞれ解説をして頂くと共に、GMP委員会には、「改正薬事法における査察の留意点」と題し、説明を頂き、参加者との間で熱心に質疑応答が行われた。

委員会は、前述のトップ研修会及び研修懇談会と平行して、原薬に関わる諸問題について、タイムリーな話題を取り上げた講演会を企画し、実施してきた。

30周年を契機として、総務経済委員会も更なる飛躍を目指しており、今後の活動に期待して戴きたい。

実施した講演会の演題及び講師
一覧(参考)

実施年 主  題
1998年6月 演題: 保険薬価制度今後の展望について
講師: 日薬連保険薬価研究委員会 渡辺 様
1999年2月 演題: 医療材料産業に見る危機意識と先見性について
講師: 化学工業日報社 藤本 様
1999年6月 演題: 原薬GMPの最近の動向
講師: 原薬工 松本GMP委員長
1999年11月

演題: 最近のGMPの話題ICHについて
講師: 原薬工 松本GMP委員長

演題: 武田薬品における原薬の生産体制構想について
講師: 武田薬品工業(株)取締役製薬本部長 中村 様

2001年2月

演題: 化学品に係るITの現状と企業における生かし方
講師: 三井物産(株)企画業務室室長 田口 様

演題: IT時代における経営のあり方について
講師: 三井物産(株)戦略研究所所長 寺島 様

2002年2月

演題: 原薬GMPガイドラインに関する問題点について
講師: 原薬工 松本専務理事

演題: 薬事制度の見直し状況及びその問題点について
講師: 原薬工 赤田法規委員長